試験管の中の癇癪

十二番隊から届け物を受け取れ、だとか不吉極まりない、そしてなぜ副隊長がそんな雑用をしなければいけないのかとちらちら思う。気を取り直して。

「すいません三番隊副隊長、吉良イヅルです」

ドアが自動で開いて、僕はその中に入っていく。涅隊長は不在だった。

代わりにいたのは、阿近、という技術開発局の人間だった。

「あー、すんませんねわざわざ。お疲れ様です」

「で、届け物とは?」

「あぁ、これです」

彼が顎をしゃくった先には大きな水槽。中には長い髪の少女が浮いていた。

寝ているようだ。

「か、彼女は?」

「あぁ、任務で四肢欠損してしまったんで、治しているんですよ」

わからないでしょう?そう阿近は言う。その声で彼女が目を覚ました。

阿近を見るや思い切り顔をしかめる。

「あぁ、治療に痛みはつき物ですんで」

で、本題はここからで、と彼は僕を見た。

「こいつ、引き取ってください。手続きはもう済んでるんでもうこいつは三番隊です」

僕も彼女も大きく目を見開いた。なんだってのよ!彼女が水槽の中で叫ぶ。

「早く準備しろよ」

阿近がどこぞの仕掛けを動かすと、水槽の中の水が引いていく。

「わかってるわよ、すいません待っててください副隊長」

ぺたぺたと彼女が走り去っていく。全裸で。

「目のやり場に困りましたか」

にや、と彼がそう聞いてきたのは完全に黙殺した。

試験管の中の癇癪



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