僕が笑えば君は泣くのだろう
(何故、なのでしょう)
やけにはっきりと意識は覚醒しているのに身体はちっとも言うことを聞きませんでした。所詮は夢だからでしょうか
両手は彼女の細い首に回されぎりぎりとこめている力が少しずつ強くなってゆくのが分かりました。
彼女が切れ切れにワタクシの名を呼んでいましたがワタクシが手を離す気配はありませんでした(無責任かつ他人事のような言い方ですがこのときのワタクシの手は完全に独立して動いておりワタクシの命令など聞き入れない有様だったのです)
「申し訳、ありません」
私の反射的なその謝罪は彼女に届いていないようで、彼女は必死に私の手を掴んで引き剥がそうとしましたしかしその程度の力で、これがはがれるはずもないのです。
きら、と彼女の左薬指の指輪が光りました。ノボリからもらったものなのでしょう。
それを認識したとたんにふいに私の腕に力がこもりました。
彼女はいよいよ苦しそうに喘ぎ目には涙がたまっています。そしてそれを見て私は、確かに笑っていたのです
僕が笑えば君は泣くのだろう
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