白に酔う
ぐい、と腕を引っ張られホームに引き戻される。
「行かないで欲しいなぁ、なんて」
彼が私の手を離さないままそう言って小首をかしげる。
その間に終電の扉は閉まり、あっという間にホームから消えた。
「車掌が乗車妨害していいんですか、サブウェイマスターさん」
私が呆れてそう言うと彼は私の口元を塞いで、耳元に自分の唇を寄せた
「クダリ、って呼んで」
思わず反射で腰を引かせたが、彼がすかさず抱きとめたせいで脱出は失敗に終わった。
「手馴れてますね」
そう?と彼は笑う。私は諦めてきつく目をつぶった。
「これからどうするつもりなんです?」
クダリさんは私をぱっと解放して、あと十五分待って欲しいな、と言った。
「着替えてくるから、ちょっと待ってて」
白に酔う
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