咎人は歩いていく
とろとろと淡く濁る意識の中で私は彼の後ろ姿を見つけた。自分の恩人である彼を自分の夢に出演させられたことについて私はとても嬉しく思う。
「言峰さん!」
彼は振り返り、私の姿を見るとふ、と小さく笑った。私はもっと嬉しくなって走って彼に近づく。彼は私に合わせて歩幅をゆるめた。
「どこへ行くんですか?」
「遠いところだ」
「ご一緒しても?」
「あぁ」
その後も彼にくっついてひたすらに歩いていた。この道はどこに続いているんだろうか。
気がつけば歩いてきた道にてんてんと赤い花が咲いていた。彼の足跡から生えてるようだった。
「綺麗」
言峰さんが後ろを振り向いた。あぁそうだ彼の名前は
「いえあの言峰さんの名前を呼んだわけではなくて、そんな失礼なことはしないです」
「気にせずともいい」
彼はまた歩き始めた。相変わらずに赤い花はてんてんと咲き乱れている。
咎人は歩いていく
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