流れるものが赤なら良かったのに

ぼろぼろと彼女がこぼすその液体は限りなく透明で、きらきらと輝いていた。

だからその涙がおおよそ悪いものだと、どうしても僕は思えなかった。

(もしここで流れているのが血なら、僕はもっと焦っていたし、悪いことをしたという自覚があったはずだ)

だけれど彼女は身体的には無傷だし、流れているのは透明な涙だけだ。

「ごめんね、」

やっとその四文字を絞り出した。あぁ、人間的に恋人的に最低だなぁ僕は。

僕は彼女の涙をやっとぬぐった。

流れるものが赤なら良かったのに




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テーマ「人外ファンタジー」
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