たとえばマルチトレインにいらっしゃるお客様の中には、恋人同士というものが中々に多かったりするのでございます。
その中でもごくたまに、
「ノボリ、またあの人彼女変わってる」
クダリがそう面白そうに指差したのは、挑戦に来てくださる度に相方の女性が変わっている男性客でした
たとえば、手のつなぎ方などを見るに、まず間違いなく今回も恋人なのでしょう。
「……あのような考え方は、私には理解できかねますが」
そう私が呟くとクダリはだろうね、と愉快そうに言いました。
「そういえばさ、ノボリ」
あの子の死んだホームでたまに、新しい血痕が見つかってるんだってさ。
「怪談の季節はもう過ぎ去ったはずですが」
「でもあの子の命日はもうすぐだよ」
先ほどと変わらない口調で、そうクダリは言いました。
そして自分の左手首をとんとんと指差し、
「あとねノボリ、見えてる」
クダリが言った通り、私の左手首から直りかけの傷跡が白く見えました。
「あぁ、ありがとうございます、クダリ。」
そうクダリに礼を言って私は白手袋をはめなおしました。
BadBye/初音ミク
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企画サイト
『無限ループ』さまに提出
素敵企画ありがとうございました!
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遅くなってしまいましたしかもこれは……夢?
大好きなこの曲を本当にストレートな解釈で書かせて頂きました。
好き勝手やりすぎた節もありますが、楽しんでいただければ幸いです。