アーティさんのハハコモリに三タテされてから早数日、私はアーティさんのアトリエにて二時間ほど動かないことを強いられていた。もう少し詳しく言うあらば、ジム再戦を餌にモデルになることを強いられていた。
「ジムリーダーがこんなことしていいのですか」
最初に来たときやけにピエロさんたちに同情的な視線を向けられると思ったら。
確かにこれは理不尽である。
「動かないでよ」
「…………」
まったく理不尽である
「いやえねぇ、本当は君をこのまま先に行かせたくないんだよねぇ」
アーティさんは私を黙らせた上で勝手にしゃべりだした。
「でも君のことをこんな形で足止めし続けて君に嫌われたくないし」
今更な気はするのだが、反論はできない(どうせまた理不尽に黙らされる)
私が黙ったままでいると、アーティさんはわざわざ筆を置いてぽんと手を叩いた。
「そうだ、結婚しよう」
「帰っていいですか」
うっかりしゃべってしまったら後十分そのままで、とぴしゃりと言われた。黙らざるをえない。
「……結婚なんてしなくても戻ってきますよ」
「ならいいや」
アーティさんはあっさりと前言を撤回して、カンバスに筆を走らせた。