彼女のバトルを見られるのならば、というのは公私混同でしょう


「おや、挑戦者様ですか」

二日連続で私のところまで挑戦者がいらっしゃるなんて、と思っていたら彼女でございました。

「朝ごはんとか、いろいろありがとうございました」

「お口に合えばよかったのですが」

それを言う為にわざわざここまで?と私が問うと彼女はそれを言いたかったのもあるんですが、と笑いました。

「ノボリさんと再戦したくて」

嗚呼なんという殺し文句でしょうか。

「かしこまりました。それでは早速はじめることに致しましょうか」

彼女も私も昨日と同じ手持ちでしたが、心なしかレイシ様のワルビアルが
シャンデラではなく私自身の方に敵意を向けているような気がいたします。

いえ実際にレイシ様が、ワルビアル!シャンデラに集中!などと激を飛ばしているので案外気のせいではないのでしょう。

「ワルビアル、地震!」

「シャンデラ、鬼火!」




「やっぱりノボリさん強いですよ」

「いえ、レイシ様には今回も前回も冷や汗をかかされました」

今日も彼女は強く、私はまたぎりぎりのところで勝利致しました。

しかしながら彼女もまた、私達に一度勝利してしまえば、いえ、勝てないからと愛想をつかして私どもの所から去ってしまうのではという恐怖を私は感じるのでございます。

私たちはいえ少なくとも私はやはり彼女がここにずっと居てくれれば、と思っているのでございます。

「そういえばレイシ様は普段何を?」

彼女にそう話題を振ると(何分沈黙は気まずいもので)彼女は気まずそうに目を逸らしました。

「私あの、ヒウンの小会社勤めだったんですけど、最近潰れたんですよ。あの、プラズマ団?だかが裏でかんでたとかなんだがで。それで、」

だから今私無職です。無職。と彼女は自嘲気味に笑いました。

あぁそれならば、と私は珍しく何も考えずに彼女に問いました。

「このバトルサブウェイで働いてみるというのはいかがでしょう」

昨日の恩返しも含めて、と付け足したのは少々卑怯でしたでしょうか。

彼女はぽかんとしているようでございました。