お客様に残り物を出すなんて失礼だとは思うのですが、何分現在時刻は、後もう数分で日付が変わるほどの夜更け。
やはり出来る限り早くお休みになってほしいとの気持ちが勝りました。
「残り物で恐縮ですが……」
肉じゃがを皿に盛り付けて出すと彼女はいえいえそんな肉じゃが好きなんでと手をわた
わた振りました。
その言葉に嘘は無かったようで、とても美味しそうに完食して下さいました。
完食してくださり、なおかつ美味しかったと賞賛の言葉もいただけるなんて、こちらと
しても作り甲斐があるというものです(そう考えるとクダリもその点では素晴らしいものですが)
洗い物くらいは、と彼女が申し出てくださったので(むしろ頑として譲らなかったので)
お任せいたしました。
クダリに彼女の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいです。女性に向かって失礼かもしれませんが。
その後、彼女を、元クダリの部屋に案内致します(案内とはいえマンションの隣の部屋。
数メートルしか離れていないのですが)
マンションの共用廊下に出たとき、彼女が私に向かって、本当にありがとうございます、なんとお返ししていいかと頭を下げました。
「顔を上げてくださいまし」
私は彼女の目を見て語りかけました。
「私とクダリは貴方様のおかげで、久しぶりに楽しいバトルが出来ました。これはそのお
礼でございます」
「それでも、私の気がすまないんです」
あぁこの頑固さは十二分にバトルに反映されておりました。
それを思うと大変微笑ましい心持になります。
「では明日にでも、相談致しましょうか」
とりあえず今日はもうお休み下さい、と私が言うと彼女は少しの間の後素直に頷いて、おやすみなさいと私に笑いかけました。
「おやすみなさいまし」
その後私が部屋に戻りますと、クダリがモンスターボールをくるくると弄びながらぽつりと、あの子がいっそボクらの仲間になってくれればいいのにと呟きました。
やはり双子は考える事が似るのでしょうか。
「えぇ、大変同感でございます。」