「あっそうここ、ここのクレープがおいしいんだってカミツレが」
彼女と他人のデート(予定)現場の下見に行っても特に心痛んだ覚えはないので、一目惚れではなかったのだと思う。勿論友達としてはいい子だしそういう意味でなら最初から大好きである。
彼女はそのときいちごクリームと、僕がリクエストしたチョコバナナクリームを持ってベンチに座る。
雪が降らないライモンシティだって、二月は特別寒いのだ。
「あ、おいしい」
一口齧って僕がそういうと彼女はでしょうと得意げな顔をした。
「やっぱりカミツレはこういうの見つけてくるの上手だよねぇ」
いち早くいちごクリームを完食した彼女の視線に根負けして、チョコバナナクリームを一口譲った。
(今思えば彼氏より先に、そういう恋人らしいことをあの子としていたんだよなぁ)
でも当時は純然たる友人として、彼女と恋人の門出を祝福していたのだった。