まったくもって人気のないホームに私は丸まって座っていた。
少し冷えた頭で考えてみると、あそこで逃げ出してしまったのはどう考えても得策では内気がしてきた。
(というか恋愛感情を自覚してからの第一回目の対面があれって……!)
どう考えてもスタンダードではない。いや別に何がスタンダードなのかはよくわからないのだけれど。
駅員室に戻ろうかとも思ったのだが、いつの間にか泣いていたらしく頬に涙の跡らしきかぴかぴが付いていた。とても人様に見せられる状態ではない。
しかしずっとここに居るわけにもいかない。せめてお手洗いまで移動できれば、顔を洗いたい。
とりあえず私は、立ち上がろうとした。
「レイシ様!」
ノボリが向こうから走ってきた。彼がここまで焦っている様子を見るのは、はじめてかもしれない。
いや違うそういう問題でもそういう思考をしている場合じゃないだって今私の顔はべしゃべしゃなのだまかりまちがっても好きな人に見せられるものではない。
「な、なんですか」
思わずうつむき加減になってしまう。彼の顔を見れない。
「さっきの私の発言を撤回させていただきたいのと、レイシ様にもう一つ伝えたいことがあるのです」
「は、はい」
ノボリさんが一歩近づいてくるのがわかった。
「さっき私が言ってしまったあの、食事の作りあいの事ですが、あれはやはり続けていきたいのです。」
すみませんでした、と頭を下げるノボリさん。
「いえ、大丈夫です。ノボリさんのご飯おいしいんで、続けてくれるのは、とてもうれしいです」
確実にずれたことを言っている気がする。食い意地をはっている人みたいじゃないか。
「そもそもあんな事を言ってしまったのは、私の勘違いからなのです」
レイシ様が告白されているのを見て私は、レイシ様に恋人ができたのだと勘違いしてしまったのです。
そう彼は続けた。
ああ、あの時、ノボリさんにその現場を見られていたのだ。