そんなことがわかったとしても


「クダリさん!」

無事二十一戦目である。途中に鉄道員の方々がいなかったのは本当にラッキーだった。

そんな私にかまわずクダリさんはいつもの台詞を呟いて、私に向かって笑いかけた。

「すっごいバトル、はじめる」

私はあきらめて、ワルビアルとジャローダを出した。



……あっけなく勝ってしまった。こんなことを言っては失礼かもしれないけれど、最初に挑戦したときよりずいぶんと弱かったような。

「僕、弱かったでしょ?」

クダリさんが変わらない笑顔でそう言ってきた。私が答えられずにいるとクダリさんは更に言葉を続ける。

「これが僕らのノーマルトレインでの実力。レイシが僕らに挑戦してきた四回のうち、三回はスーパートレイン並の難易度。他一回は、今」

レイシ強いから僕らつい本気出しちゃった。ごめんねぇ、と反省の色がまったくなさげなクダリさん。

「僕らってことは、ノボリさんもですか?」

もちろん、とクダリさん。

「僕らはレイシのバトルに惚れた。でもね、ノボリはきっとそれだけじゃない。」

クダリさんは私をぴっ、と指差した。

「レイシがノボリを好きなように、ノボリもレイシのことが好きなんだ」

「………………え、」

クダリさんの言っていることを理解した私は、急に今までのことがすべて腑に落ちた気がした。

「私は、ノボリさんのことが好きなんですね」

一度自覚してしまうとその感情はさも当たり前のように思えた。

「でも、ノボリさんが私のこと好きって」

多分ね、サブウェイマスターの勘ってやつ?とクダリさんが言ったタイミングで列車が停止した。開いた扉の前に立ったクダリさんは、優雅に一礼した。

「今度はスーパーマルチトレインへの挑戦、お待ちしております」

クダリさんに礼を言って降りると、目の前にノボリさんが立っていた。

ノボリさんは私の姿を見とめるやいなや口を開いた。

「お疲れ様です。提案なのですが、今後食事の作りあいは――」

ノボリさんのこの提案がどうして出てきたのかがよくわからないのだが、つまり、

ノボリさんは私を拒絶しようとしている

その結論にたどり着いても、私はどうしようもなく、ついにその場を逃げだしてしまった。

これ以上ノボリさんの口から、私を拒絶するような言葉を聞きたくなかった.