私は一体彼の事を


「最近、下衆な奴が増えたわ」

そう舌打ちをしたのはクラウドさんさんである。

最近盗撮魔が洒落にならないくらいに多い。

その元凶である私以外が被害に遭う前に対策を、とノボリさんに言ったらノボリさんは苦い声で

「お客様が被害に遭わないようにするのは必要最低事項でございます。本当の最善は、駅員に対する被害もすべて防ぐことでございます」

と私に言った。

というわけでここ数日、私はクダリさんかクラウドさんとほぼいつも一緒に行動することになった。そしてノボリさんが送迎である。

お手数をかけて申し訳ありませんとノボリさんに言ったら、もう一度同じことを諭された。クダリさんに言ったらそもそも悪いのはノボリだし、と意味深に首をかしげた。

そしてクラウドさんいわく「餌や餌!この際盗撮野郎一斉検挙や!」である。むしろだいぶ救われた。

ちなみについさっきもまた一人クダリさんが捕まえていた。相当生き生きしていた。

「……なぁレイシ」

クラウドさんが急に改まった口調になった。

「はい」

「お前は黒いボスのことどう思ってるん?」

黒いボスとは言わずもがなノボリさんのことである。

ノボリさんのことをどう思っているか。深く考えなければもちろん尊敬できる現上司であり恩人である。

でもそんなものクラウドさんには把握されている。ということは聞きたいのはそれじゃあなくて。

私はノボリさんのことを、

「すいません!」

そのタイミングで後ろから急に声をかけられたものだから肩がびくりと震えた。

声の主をクラウドさんがじろりと睨む。完全に不審者扱いされているその人だが私はその声の主を知っている。確か一週間前の挑戦者で、

私の目の前に回りこんだのは身なりのいいおぼっちゃん、といったところの、思ったとおり以前の挑戦者の方だった。

彼は私の手を、いつかのキャメロンさんのようにがしりと握り、目をまっすぐ見て言った。

「僕と、お付き合いしてくださいませんか?」

勿論結婚を前提に、と付け加えられた。

隣で完全なる蚊帳の外となったクラウドさんがぽかんと口を開けていた。