「ノボリさん、お話があるんですが」
勝負が終わった後、トウコ様が私にそう言ってきました。
「なんでしょうか」
トウコ様が差し出して来た開いてあるゴシップ誌を受け取り、そのページに目を通します。
「……これは、どういうことです」
「私に聞かれても、そういうことですよ、としか。」
冷静なトウコ様の言葉に一瞬沸騰しかけた頭が沈静化します。
「まったくカミツレのあの行動で……」
あんな意味のないふざけた行動がこんな事態を引き起こしてしまうとは。
私がそう呟くとトウコ様は呆れた顔をしました。
「本当に分かってないんですね。カミツレさんがあんな事したの」
「?」
私が怪訝に思うとトウコ様は、カミツレさんから全部聞きました、と言いました。
「何をです?」
「カミツレさんがあんな事したのは、ノボリさんがレイシちゃんをどう思ってるか確かめる為です」
「……どう思っている、とは」
「言葉のままです」
そう言ってトウコ様は私をまっすぐ見て、レイシちゃんをどう思っているんですか?と、問いかけました。
「どうも何も、私はレイシ様を有能な部下として、腕の立つトレーナーとしてみております」
トウコ様の目をまっすぐ見てそう言うと、トウコ様は心底呆れたように笑って、
「その割には、レイシ“様”なんですね」
「……何が言いたいのですか」
「わからないなら結構です」
そうトウコ様は言い捨てて、ちょうど停車したトレインから降りて行きました