まったく今日は忙しいというのに


カミツレをクダリが連れて行ってしまいました。

(まったく、どこへ行ったというのでしょう)

二人を探し、駅員室の方へ向かうと、レイシ様とそれにまとわりついているカミツレ、少し離れて面白そうな顔をしたクダリと苦虫を噛み潰したような顔のクラウド。そしてクラウドの背後には心配そうな顔をしたシンゲン。

……なんなんでしょうこの集団は。

「あ、ノボリさん」

若干レイシ様が申し訳なさそうな顔になります。

「どういうことですか」

「クダリさんが私にカミツレさんの案内を頼んで、それで」

レイシ様が一瞬言いよどんだ隙をついてクダリが台詞をさらっていきました。

「それでクラウドが心配だからって着いてきて、それを止め損ねたシンゲンもくっついていきて、」

僕は面白そうだから着いてきた!と満面の笑みで言うクダリ。

私が呆れていると、カミツレがレイシ様の首に艶かしく腕を回しながら、そんなにカリカリしないでよ、と言いました。

「ミスターノボリ、こんな可愛い子居たら早く言ってよ」

「別に隠していたつもりはありませんよ、カミツレ」

レイシ様が一瞬複雑そうな顔をした気がしますが、きっと見間違いでしょう。

「あまり私の部下にまとわりつかないで下さいまし」

「部下、ね」

カミツレは唇の端で笑ったあと、レイシ様の頬に唇を近づけ

「え」

固まっているレイシ様の代わりに私はカミツレを強引に引き剥がしました。

「カミツレ、それ以上は目に余ります。やめろ、と言っているのが分かりませんか」

カミツレは何も言わずに首をすくめました。

「それは、この子の上司としてなのね?」

「当たり前です」

私がそう即答すると、カミツレはあっさりレイシ様から離れ、レイシ様の手をひっぱって

「じゃあ準備してくるわね」

そう去っていきました。