ノボリさんは料理上手である


「それ、黒ボスの弁当やろ」

ノボリさんの朝食と、(私が遠慮しまくった結果ノボリさんが折衷案として提案した)
彼との弁当の作りあいっこは順調に続いている

「あ、はいノボリさんのです」

大体二人とも前日のおかず(いつの間にか夜ご飯も交代制になっていた。クダリさんは食べる係)を詰めている為、基本的に内容は似通っているはずなのになぜかクラウドさんには一発で見分けられる。これは確かにノボリさんが昨日作った夜ご飯と朝作ったおかず二品である。

クラウドさんは苦虫を噛み潰したような顔で

「次、マルチでお前と俺や」

と言った。

「あれクラウドさん、いつもシンゲンさんとですよね?」

私も基本的にペアはジャッキーさんとだ。

「あの二人はカズマサ探しや」

「あぁ、なるほど……」


一回迷子になったカズマサさんを見つけるには運がよくても三十分はかかる。

私はシングルにさっきまで居たのできっと手が空いていたであろう二人に回ってきたのであろう。

「とりあえず俺はデンチュラとシンボラー使うから、適当に決めとけや」

そう言ってクラウドさんは自分のデスクに戻った。

ちなみに彼のデスクは私の真向かいである。毎日妙な威圧感が立ち上っている。

「……あの、クラウドさんお昼食べました?」

あまりにも二人きりの沈黙が重いので話しかけてしまう。

シンゲンさんなど贅沢は言わないのでせめてキャメロンさんあたりの外食組が戻ってきてほしい。空気が思い。


「まだ食ってへん」

相変わらずつっけんどんな口調である。

「ではあの、卵焼きいかがですか?」

私がそう駄目元で卵焼きを一切れ勧めると、クラウドさんは少し考えたあと、指でつまんでえぇか?と聞いた。

「大丈夫です」

周りにおかずはほとんど残っていないし。

クラウドさんは卵焼きを口の中に放り込みほとんど丸呑みするとおおきに、と呟いた。