「あのさ、俺と付き合ってくれないかな」
クラスの同級生(注,塾の方ではない)に告白された。
「ごめんなさい」
私にはやりたい事があるの、と理由を述べる。
さすがにあなたに付き合ってる暇なんかない、とは言えないけれど。
「どうして?」
どうして?だから私にはやりたい事があるの。
「俺は君のやりたい事の邪魔はしない」
「どうしてそう言い切れるの」
あなたはこちら側の人間じゃあないでしょう。一生悪魔だとか、そんなものと縁がない人生を送るんでしょう。
「どうしてって……」
その顔は。自分がなんでもできるしなんでも自分の思い通りになると思ってる。
そんな顔。少し前までの私の顔。
「だから、私はあなたをなんとも思っていないの。もうこれ以上あなたを傷つける言葉を
言わせないで。」
建前をつらつら並べ立てる。本当はただ私の邪魔をして欲しくないだけなのだ。
「…………わかったよ」
彼は舌打ちをして去って行った。ああ、そのくらい隠せばいいのに。
ただの典型的なおぼっちゃんもどきだ。
授業に遅れてしまう、と塾へ向かう。塾の鍵を開けたその場所にちょうど彼がいた。
「あ」
「探していた。ちょっと来い」
「でも授業が」
「話は通してある。後でちゃんと湯ノ川がカバーしてくれるそうだ」
それならば、と彼に導かれるまま着いていった。
邪魔をしないでよ