随分と遅くなってしまった。窓の外は夕焼けである。
正直まったくもって寮の門限に間に合う気がしない。鍵があるとはいえど今が門限時刻
なのだから。
塾で自習してうっかり時間を忘れた結果がこれである。
「まだ残っている奴がいるのか?」
あわてて片付けていると、先生が来た。
「すいませんすぐ片付けます!」
「いや、慌てなくていい」
彼はそう言って待っている。おそらく戸締りの当番なのだろう。
できる限りてきぱきと片付け、ドアの所にいる彼に礼を言う。
彼はあぁと答え扉の鍵を閉める。
この部屋が最後だったらしく鍵束を置きに戻る彼と一緒に廊下を歩く。
「寮の門限は大丈夫なのか」
「……大丈夫じゃないです」
しかし彼と並んで歩けたのだからどうでもいいかと思ってしまう自分がいる。
「あまり無理はするなよ」
ぽん、と彼が私の頭に手をのせた。
「はい」
ああ声が震えてはいなかっただろうか
自分にこんな恋物語の一場面みたいな事が起こるとは思わなかった。
顔の赤さはきっと西日で隠れているはずである。
舞台はリノリウムの廊下
照明は蛍光灯と朱い西日