熱視線と低体温


廊下で先生を見かけた。


(相変わらず危なっかしい足取りだなぁ……)


召喚するのに血が要るのは知っているが、彼の場合異常な程ではないだろうか。


彼はもっと鉄分を摂取すべきである。


またいつものように手伝おう、と彼の元に向かおうとした。


するとぐらり、と彼の体が傾く。


「ネイガウス先生!?」


自分の声は悲鳴に近かった。


とっさに駆け寄る、が間に合わずかえって自分も転倒してしまう。


「大丈夫ですか?」


起き上がって彼がぶちまけてしまった書類を集める。


「……すまん」


「謝らないでください」


彼に拾い集めた書類の束を渡す。


「大丈夫ですか?」


「あぁ」


書類を受け取った彼は私に礼を言って歩き去った。


「…………」


書類の受け渡しの時に少し触れた彼の指は死人のように冷たかった。


(うっかり顔があかくなっていなかっただろうか)


先生を見つめる視線が熱を持ってはいなかっただろうか。



熱視線低体温