Story
「あー、平和島さん!」
休みの日、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「鬼那」
「お久しぶりですー」
相変わらずにこにこしている。
「あぁ、取材以来か?」
「そうですかねー。あ、トムさんには一回会いました」
「聞いた聞いた」
まぁその時言われたことは、言えるわけがない。
「そういえばここらへんにおいしいケーキ屋さんがあるらしいんですよ」
一緒に行きませんかー?とにこにこ笑う鬼那。
「プリンもおいしいんですよねぇ」
「……行く」
別にプリンに釣られたわけじゃなく。断じてなく。
というか、了承出してから気が付いたんだが、
同じ年代の、男女が、二人で歩いている、
「なんかデートみたいですねー」
「…………あぁ」
やっぱりそうだよな。
別にこっちは悪い気はしないけども向こうはどうなんだろう。
デートと言い出したのは向こうなんだからとくに悪い気はしてないのだろうか。
それなら、少し嬉しい。なんてガラじゃねぇか。
「……どうしたんですか?」
あまりに黙ってたら心配された。
「いや別に」
ちょっとこいつと歩いて出かけるのが楽しい、なんて。