それは自分の炎の色だった

たった今彼の胸から取り出したそれを彼に渡す。


「……これをどうすりゃいいんだ?」


「どうしたもこうしたも貴方の心臓です。大部分の魔力を司る悪魔の心臓。今話したでしょう?」


「いや、だから」


問い直そうとした彼の唇にぴっと指を重ねる


「自分で持っているもよし、大切な人間に預けるもよし。まぁ、前者がほとんどですがね。心臓の名の通り、自分から離せば副作用がありますし壊されれば死にます。」


「……お前はどうしたんだ?誰かに預けたりとかしたのか?」


「さぁて☆
……まぁ、今現在私のこの心臓は私の手元にあります。」


そう言って私は笑う。あの時食べた自分の心臓は思ったより甘くて、やはり苦かった。


「奥村燐君、あなたは誰に渡しますか?」




あいつは、これを、大切な「人間」に渡すもよし、と言ったのだ。


俺の心臓は心臓という割に青い歪な形をしていた。
ガラスみたいですぐ壊れそうだが意外と頑丈。


「渡す、とか言ってもなぁー……」


正直自分の中にしまう……つまり食べる……事はあまりしたくない。


食欲のわかない透き通った青さ。


……もしこれを渡すなら、そんな人間は一人しかいなかった。


「なぁ、雪男」


「……何?兄さん。宿題の答えなら教えてあげないよ」


「そうじゃなくて!これ持っててほしいんだ」


そう言って差し出す。


「何これ?」


そう怪訝な顔をする雪男。


「俺の心臓」


本気で頭の心配をされる前にさっきメフィストから聞いた説明をできる限り詳しく思い出して、雪男にする。


「……わかったけどさ、なんでそんな物僕に渡すの」


「え、いや、だって、雪男なら大丈夫かなと思ってよ」


だってお前ならもし俺を殺さなきゃいけない時にこの心臓を壊してくれるだろ?


それに俺にとって一番大切な人間は、お前しかいない。


そう言うと雪男は困った顔をしながらもどこか嬉しそうに心臓を受け取ってくれた。


俺の心臓は俺の炎の色をしていた



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