ささくれ。

「あら」
指にささくれができていた。冬になるとたまにできる。
「あぁこれだからこっちは不便なんですよね」
所詮悪魔の回復力をもってすればこのくらい一瞬で治るが。
自分の身体は中途半端に人間らしくて、そのくせ200年前からこの姿は変わらない。


「……まったく、嫌になる」


「どうした?」
そのとき唐突に話しかけてきたのは、
「…………任務はもう終わったんですか、藤本神父。湧いてこないでください」
「普通にドアから入ってきたつもりなんだけどなぁ。悪魔でももうろくすんのか?」
「そんなわけないじゃないですか。そんなことより、任務どうでしたか?」
「……お前いい加減軽装備詐欺やめろよ。俺が死んだらどうすんだ」
「毎回だまされてくれるあなたもあなたですがねぇ☆」
いつものちゃらけた口調で答える。最後の台詞は聞こえなかったふりをして。


ささくれてたのは指先だけじゃなく。


「んっとに、ひねくれたやつだなお前」
「まぁ、悪魔ですから?」
「そうだったな」
そうにぃと笑う藤本。
「まぁ、お前一人置いてくことはしねぇよ」
「それは一緒に死ねということか?」
そう言うと彼は心底不思議そうな顔をして、


「俺がお前とずっと生きてやるっつってんだよ」


「……あまりほざくなよ、人間風情が」
「思い出したように悪魔だよなぁお前は」
「黙れ獅郎」
それはいつもはどう見えているという意味だ。
お前と同じ、人間に見えているとでもいうのか


「だってお前人間より人間くせぇぞ。」


「…………ずいぶん失礼なこと言ってくれるじゃないですか」
「可愛くねぇなぁ」
「あなたの目が節穴だからじゃないですか?」
こいつと話しているといつの間にか、さっきちくりと感じた気持ちがなくなっていた。


「黙ってれば可愛いのによぉ」
「そういわれるとかえって寒気がします」
「どっちだ」


まったく、悪魔が神父に救われるなんて事があっていいんですかね。


救いなんて求めていないはずだったのに




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