それは彼女の好きな芽の色をしていた

「どうぞ」


「……え?」


アマイモンがしえみに差し出したのは、浅黄色のいびつな球体。


「僕の心臓です」


「えっ心臓!?大丈夫なの!?死んじゃわない!?」


詳しいことは何一つ説明していないのに心臓と言っただけでわたわたと心配をするしえみ。


「大丈夫です。だからあなたに渡しました。」


「そっか、そうだよね……」


胸をなでおろしその球体を受け取るしえみ。


「これ、どうすればいいの?」


「持っていてくれるだけでいいです。あなたが死んだら返してください」


「死んだら返せないんじゃないかな……」


「じゃあ僕が取りに行きます」


「ごめんね」


「別にいいです。あ、それともう一つ。」


ぴっとしえみの目の前に一本指を出すアマイモン。



「もしボクがあなたを殺しそうになったら、この心臓を壊してください」



「……え?」


「絶対ですよ。そうしないとあなたの目玉を抉り出してしまおうかな」


「わかりましたわかりました!」


そうしえみが了承し、アマイモンは少しだけ安心した。もちろん顔には出ていない。


これで彼女は大丈夫だ。


「……あ、おなかすきました。食べないと死んでしまうかもしれない」


「え!?……なんか食べる?」


「食べます」



ボクの心臓は彼女の好きな花の芽の色をしていた


「……兄上の言った通り、大切な人間に心臓を渡してきました。」
「そうか。」



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