霧の中

「霧だ」

霧が出ていた。珍しく。

「こんな濃霧めずらしくないですか?虎徹さん」

「そうだよなー……俺もさすがにこのレベルは初体験だわ」

何しろ数メートル先すら見えないのだ。

「バニー大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫です」

そういえば、と虎徹が話を変える

「霧って向こうから何が来てもすぐは分からないだろ?」

「そうですね」

「だから時々、人じゃないモノだとかがその霧にまぎれて街を歩く、んだとさ」

「ホラー映画ですか」

「違う違う!楓が読んだ本にそんな話が載ってたんだとさ。」

そんなくだらない話をしていると前方に人影が見えた

「!」

急ブレーキをかける。キィィィという甲高い音。

「バニーちゃんあぶなっ!」

「轢いてないからいいんですよ!」

ヒーローが一般市民を車で轢いた、なんて笑い話にもならない。

見るともう人影は無い。無事だったという事だろう。

「一応確認しておきましょうか」

二人で車から降りて車の前に向かう。

「……誰もいねぇよなぁ?」

「そうですね」

二人でよかったよかったと車に戻る。

「さっき轢きそうになった方たち、どこに行ったんでしょうね?」

「たち?一人だけじゃなかったか?髪の長い女だけだろ?」

「何言ってるんですか二人だったじゃないですか。髪の短い女性と男性。夫婦とかでしょう」

「えぇー……」

納得していない風情の虎徹。

「まぁいいです。虎徹さんが老眼気味って事でいいです」

「やめて!?」

「早く行かないと仕事に遅れますよ」

「そうだね……」

二人で車に戻る。

(いや待てよ……さっきのあれともえに似てたような……んなバカな)

(さっきの二人って父さんと母さん……そんな訳ないか。)


霧の中

霧の中
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やまなしおちなしいみなし



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