猫の手

「終わんない!」

大きく私が伸びをしてそういうと吉良副隊長が沈んだように

「……ごめんね」

と言う。

「あっいやいやいや!吉良副隊長のせいでは微塵もありません!」

そう、悪いのはあのキツネ目元隊長だ。

副隊長含め下がりまくりのうちの士気を通常通りまで戻すのにどれだけ私が苦労したか。
「しかもうちは三席すらもともといませんし。正直副隊長にかかる負担大きすぎるんです
よ。いつも猫の手借りたい状態じゃないですか」

「まぁでも、君がいてくれてよかったよ。」

ああこの人こういうセリフを何の気なしに吐くからいやなんだまったくもう。

期待してしまうじゃないかだってあなたは雛森副隊長が好きなんでしょう

「私、猫の手より役に立ちますか?」

「もちろん。キツネの手よりも役に立つよ」

この人があのキツネ目をネタにするなんて、いい傾向だろうか。

それにしてもこの人に抱くいろいろな心配は部下としてなのか異性としてなのか混ざりすぎてわからなくなってきた。

「ほんとうにありがとう」

そうにこりと笑う。久しぶりだな、この笑顔も。うっかりどきりとしてしまう。


とりあえず、今は少なくともこの人のいい部下である為、猫の手よりもキツネの手よりも役に立ちたい。
それだけは確かである

「顔赤いけど、大丈夫!?」
「あっはい全くもって心配ありません!」

だからこんな、焦った顔はさせてはいけないのだ。


猫の手は借りなくてもいい


猫の手
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イヅルで思い浮かぶのはくっつく一歩手前、すれ違い、山積みの書類。



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