だったら息を止めてしまえ
自分は化け物だともう充分理解しているつもりでいた。
だからもうこれ以上自分から何か大切な物を奪わないでと懇願していた。
「なぁ、」
そう俺が声をかけようとすると、彼はふっと笑い、青い炎になって溶けていった。
「あ……!」
そう口からふと声を漏らしても、その声は周りの暗闇に吸い込まれる。
ここには、自分以外誰もいないのだ、と理解するのにそう時間はかからなかった。
「雪男……!」
さっき消えたあいつの名を呼んでも届くはずないのに。
「…………まぁ、夢、だよな、うん。」
気にしていないような軽い口調で言うも背中は汗びっしょりだ。
「…………」
もし自分が愛するこの弟を万が一にも殺してしまうことがあったら、そのときは、
おれはいきることができなくなるかもしれない
だったら息を止めてしまえだったら息を止めてしまえ
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365日企画「甘」の一か月分終了。次から「爛」です。
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