あの味に似ている

まったく厨房が騒がしいと思えば。

「私はあなたたちに商売させるために実習室の使用を許可したわけじゃありません」

と言いながらもさっき好奇心から頼んだ日替わりランチのミソスープをすする。

ちょうど腹が減っていたところだ。適当に奥村燐の相手をしながら味わうとしよう。

注文どおりに多く盛られたミソスープの具は定番の、ワカメと立方体の豆腐。

(……これは)

いい加減こっちに来て長いので、このミソスープという料理が、料理人ひいては家庭ごとに違う味噌の配分によって味が異なるということは知っている。

それを踏まえると、この味は、

ごくたまに獅郎が作ってくれていたミソスープの味で同じで。

たしかに彼は獅郎の子だと自覚させられる。

そういえば前一度だけ、冗談めかして『あなたの作ったミソスープは毎日飲みたいくらいです☆』と言った覚えがある。プロポーズかお前冗談ぬかせと笑い飛ばされたが。

(別にプロポーズならそれはそれで本気だったんですけどねぇ……)

そんな夢物語を描いた事もあった。

……ま、昔の話ですがね。

「あ、ミソスープおかわりで」

あの味に似ている


あの味に似ている
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捏造である



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