反・時計回り
家の時計がぐるぐると半時計周りを続けている。原因不明。
「早くなおせよー」
「めんどくせぇ」
「不便じゃねえの?」
「特に」
「変なのー」
本当は、ネジを巻いても直らないだけだ。
別に普通の時計なのに。
あれか、俺が過去に戻りたい、とか?
そう思った瞬間、
「あ、れ?」
俺は秋らしく紅葉した森に一人で立っていた。あれ、さっきまで話してたあいつは?
しかも服装も秋に即したものになっている。うそだろさっきまで夏だったぜ
するとそのとき向こうからかさかさと足音が聞こえてきて。
「ごめんね、待った?」
あぁ、そうだ確かこの日に俺はこんな変な所で待ち合わせていたんだ。
「いや、ぜんぜん待ってないよ」
こんな森が好きな変な女と。
そしてこの日からこいつと会わなくなった。
まことに不本意なことに、俺はその事が一年近く気になっていたらしい。喉にささった小骨のように。
「よかったぁ」
そう笑う彼女。
こいつと明日からも会えるようにするのが、あの時計の役割だったらしい。
なんて、突拍子もない話。
……まったく、これが夢なら早く終わらせて、さっさと目覚めよう。あぁそうしよう
反時計回り反・時計回り
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恋と書いて変なひとたち
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