ハッピーエンドロール
「真太がこんな洒落たことできるなんて、ねぇ」
馬鹿にしてるだろ、と俺はわざとらしくしかめつらを作る。観覧車はもう半分を過ぎたあたりだろうか。俺は指輪紛失、だなんてへまはしねぇ。と思いつつもポケットを念のためさりげなく確かめる。大丈夫。
きらきらした目で外を見つめている。そうだこいつは案外子供っぽいんだ。
「なぁ、」
てっぺんが近づいてきた辺りで、俺は声をかけた。
なに?と顔をこちらに向けたタイミングで俺は、
「結婚しようぜ」
自分の声が自分の声じゃあないみたいだ、こんな気取った真似はやっぱり性にあわないんだ。
「軽く言い過ぎだ、ばか」
うつむいてそう返された。照れている。
観覧車があまり揺れないようにそっと席を立ち、わしゃりと頭を撫でた。
「幸せにする」
「あたりまえだ、」
がばといきなり飛びついてきたものだから、さっきの俺の努力も水の泡である。
もう観覧車は半分以上降りたところだ。地上に着いたらクレープでも買ってやろう。
ハッピーエンドロール
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