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「貴女様はきっと私のことを本当には愛していないのでしょう。」

恋人にそんなことを言われ、戸惑わない人などいるのでしょうか。

きっと私は驚いた顔をしていたのだと思います。

そんな事を言ったあとだというのに彼は私の事を愛しげに見つめていました。

しかしその瞳の中に少しだけ悲しげな色も混じっているのです。

「何を言っているのですか、ノボリさん」

私はずっとあなたを見ていたのです。告白も私からでした。あなたがそれを知らないはずがないのになんでそんな自虐的なことを言うのでしょうか。

「私は貴女様の事をお慕いしておりましたので貴女様から告白されたときとても嬉しく思いました。しかしずっと貴女様が見ていたのは本当は私ではないのです。」

反論しようとしても口の中がからからに乾いているせいか、言葉は出てこないで、かろうじて出たのは、え、ともつかないような間の抜けたものでした。

貴女様が本当に愛していたのは、私ではなく、インゴ様なのです。

いつもと変わらない声音であっさりと彼は言いました。

なぜあなたにそんなことがわかるのですか、そう私がやっと答えると彼は、

「それは私も貴女様をずっと見ていたからでございます。

貴女様は臆病な方でした。……あれは、インゴ様は実は中々に誠実なたちなのですが不器用だからか人にはよく彼のことを残酷だと称したり、色狂いだと噂をしたりするのです。貴女様はそれに踊らされ彼のことを好きだと自覚することから逃げました。おそらくそのときにきっと勘違いしてしまったのでしょう。ですが私は、貴女様とこういう関係になってしまえば、もう、インゴ様はどうすることも出来ないとわかっていました。そうです、私こそ自己中心的な人間なのです。」

そこまで言って彼は私をきつく抱きしめました

今日の彼はまったくもって彼らしくなく、私はまだすべてを飲み込めずにいました。

だって彼の言い分だと、

「インゴさんが、私を好きだということになるではないですか」

えぇそうでございます、しかし申し訳ありません。私は彼にあなたをとられたくなかったのです。

彼は静かにそう言いました

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