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ワタクシは、卑怯者なのかもしれません」
そう彼はぽつりとつぶやきました。何故です、と私が聞くと彼は、
こうしてアナタサマの弱気に付け込んでワタクシは今こうしているのです。そう答えました。
いつもの彼らしくないあまりにも弱弱しいその態度に私は驚きました。
心なしか、私の左手に彼の手の震えが伝わってくるようでした。
「アナタサマが、彼に、ノボリに振られたあの場にワタクシはいたのです。そしてそこでワタクシは、その展開を望んでしまったのです。願ってしまったのです。しかし誤解しないでください、これをアナタサマに言うことによって私の罪が軽くなれば、とそう思ったわけではないのですそれだけは信じてください。こんなワタクシがアナタサマを幸せにする、などどの面を下げて言えましょう。」
彼は深く制帽を被りなおしました。表情が読み取れないようにでしょうか。
「私はそれでもインゴさんに、あの時優しくしていただいて、嬉しくなかったといえばうそになります。
今こうして手を繋いでいることが、幸せなのです。ですから、あまり気に病まないでください」
私はインゴさんのことを愛しているのです。とそう口に出してみてどきりとしました。
私はインゴさんをノボリさんの代替としてみているのではないか、なんて。そんなことをちらりとでも思ってしまった自分に、です。
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