とおせんぼ
ば、と彼は両手を広げてドアーの前に立ちふさがった。
降りられないんですけど、そう私が睨んでも彼はどこ吹く風といったところだ。
「だって、降ろさないもん!」
彼がおかしなことを言い出すのはいつものことだ。そしていつも趣味は悪いが冗談である。
「君が僕に勝てるまで、うぅん勝てても降ろさない。君と僕がひからびて死んじゃうまで、」
にこお、と子供みたいな笑顔で彼が両手を広げたまま笑ったものだから、私は毒気を抜かれてしまった。
このままずっと、彼と干からびるまでここに居るのも案外悪くない、のかもしれないけれど。
「それでも私はあなたと一生を終えたいと思うほどあなたを好きではないんです」
とおせんぼ
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