発火
ぼっ、と彼女が放った炎で危うく私のコートが焼け焦げそうになるところでした。
「大丈夫でしょうか」
彼女ははっとして悲しそうに目を伏せました。
「いいえ気にしなくてもいいのです」
私も驚かせてしまいましたし。
「さぁ、帰りましょう。こんなところにいたのではいくらほのおのからだといえど、風邪を引いてしまうでしょう」
私は彼女に手を差し出しました。彼女は少しためらってからその黒光りする手を重ねました。
発火
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