指でなぞる
掃除をしていたら、埃を被ったアルバムを発掘した。
(いつのだ、これ)
きっと彼のものだろうという予想はつくのだが(見覚えがないので)机の裏に落ちているなんて。
大した理由もなく、ぺらりとめくる。
(うわ初々しい)
鉄道員時代の彼らだ。
更にぺらぺらと進んでいく。手についた埃が分厚くなっていく。
「あ、」
私と、彼らの写真だ。
そういえばいつから三人で写真を撮らなくなったのだろうか。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさい」
とりあえずいつもどおりそう返すと彼は、何を見ているのですか!と私からアルバムを取り返しにかかった。
「特に恥ずかしいものは無さそうだけれど」
「そ、それはそうですが」
「ねぇノボリ、もっと沢山写真撮ろうね、私とノボリと、クダリもカミツレも、みんな一緒に。」
「……えぇ、」
彼はゆっくりと微笑みました。むしろ、その笑顔を写真に撮りたいくらいのいい表情で。
指でなぞる
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