独占欲
ぎゅう、とノボリが僕の手を握った。
「クダリ、今日ダブルに来ていた」
「あぁ、あの女性客、」
僕はそこであえてそんなそっけない、無礼な呼称を使う。
するとノボリは、幾分かほっとした表情で、お客様をそんな風に言うものではありません。と、年上ぶって僕をたしなめるのだ(同じ年のくせにね!)
「別に、ノボリが心配するようなことは、何にも起こっていないんだよ。いつもどおりに僕はノボリだけの所有物なんだし、ノボリだってそうでしょう?」
「…………所有物、までは思っておりません、が。」
「そう?」
てっきりそう思ってるのかと思ってた。
そう僕が囁くとノボリはふ、と目線を落とした。
「まったく、クダリ、あなたにだけは嘘をつけませんね」
「それは、光栄だね!」
そう言って僕はくすくすと笑った。
独占欲
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