五月蝿いな、全部あげるよ
「おじさん 虎徹さん 僕に、」
そうバーナビーがあんまり思いつめたように己の手をぎゅうと握ってくるので、虎徹は心配そうに眉をひそめた
「どうしたんだ?」
「僕に、こてつさんの、」
虎徹の左手の指はもう真っ白になっている
このままだと、取れてしまうのではないか。虎徹はふとそんなことを思った。
指輪ごと、指がとれてしまう
「こてつさんの、左手の薬指を僕に、」
ぼくにください、そう呟いたバーナビーははらはらと涙をこぼした。
「…………ばかだな」
ぜんぶやるよ、とそう呟いた虎徹の声はバーナビーの嗚咽にかき消された
五月蝿いな、全部あげるよ
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