方向転換
「臨也、俺は人間が嫌いだ。わかるかい?」
「わからないし、わかりたくもない。」
「だよね、でもつまり俺が言いたいのは、俺は君と違うということだ。」
「そうかい?所詮君は俺のコピーなのに。」
臨也と、そんなやりとりをした後、俺はただふらふらと池袋を歩き回っていた。
平和島に見られたら、何か言われるかもしれないけど。
「ほんっと、いやになる」
そう呟いたとき、路地裏から誰かが飛び出してきた。
あれ、ぶつかる
「いってぇ!」
頭を盛大に打った。
ぶつかってきたそいつに文句のひとつも言ってやろうと口を開く。
「お前いきなり−−−」
「ごめんなさい!」
そう大声で謝った相手は、平和島静雄によく似ていて、でもこの初夏にマフラーをしている。
しかも赤い切符とそのでかい鞄なんなんだよ。
……変なやつ
「あっそのっ怪我はないですか!?大丈夫ですか!?」
そうあたふたする姿を見て余計にそう思う。
「大丈夫」
しかしながら、
「お前こそほっぺすりむいてんぞ」
「えっあっマジだ」
人間が嫌いなはずなのに、なぜかこいつは嫌な感情がわかない。
方向転換方向転換
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方向転換したのは六臂の感情のベクトル。
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