「やはりカナワタウンにはえもいわれぬ郷愁、と言ったものを刺激される気がいたしますね」

橋の上から車両を(本日はダブルトレインでした)を見下ろして私はそう呟きました。

遠くのほうで車両の説明をしている声がかすかに聞こえてきます。

「とはいえ、私がそんな気持ちになったところで所詮は人口物、涙など出るわけもないのです」

彼女は上手な反論が見つからないようでございました。それでも別に私はかまわないのですけれど。

夕日に照らされた金属部品の数々は、きらきらと光を反射して輝いていました。

「……それでも、私はノボリさんのその気持ちを、感情を、尊重したいと思っています」
彼女のその言葉は、おそらく今、あるいは私と出会ったときからずっと考えていたものなのでしょう。

「ありがとうございます」

私はいつもどおりに彼女の手をとりました。私には温度を、ひいては体温を感じることができないのですが、きっと彼女のような人の手は、こんな金属部品よりずっと暖かいのでしょうね。






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