不眠症

「眠れないの?」

語尾にハートマークだとかとにかく変な記号がつきそうな言葉で喋る男が私の目の前で笑っている。

「特に今日はね」

侵入者(目の前のこの男もそうだろう)がわらわら屋敷内に湧いてきて護衛を破竹の勢いでなぎ倒しているらしく、騒がしい。

「私を殺しに来たの?」

君だけじゃないけどね、と彼は言う。

「お父様とお母様も?」

「というか、皆殺し?」

なるほど

「でも君はちょっと気に入っちゃったかな」

「?」

「個人的に君は殺さないほうが面白そうなんだよねぇ、不眠症のお嬢さん?」

私は彼の差し出した手をとった。

「よろしく、ピエロさん」

案外不眠症も悪くない。

不眠症



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テーマ「人外ファンタジー」
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