inderella
これだから、取材とはいえこんな身分不相応なパーティになぞ行きたくなかったのだ。
(なぁにが、キミは見てくれがいいからねぇ、だあのクソ上司)
どんなに着飾ろうが、育ちは隠せないんだし、実際自分は確実にこのパーティーから浮いている。まぁ溶け込む努力もしていないのだから当然なのだが。
……そんな事を言うとあのクソ上司はシンデレラやらあたりを引っ張って反論してきそうだが、あれも一応上流階級の家だという事で一つ。
(さっさとヒーロー達見っけて、取材して、帰ろう)
そう決意して歩き出そうとした瞬間、慣れない華奢なヒールで足首が痛い方向によれた。
「ぎゃ」
我ながら色気の欠片もない声を発しつつ、私は後ろに倒れこんだ。
「おっと」
それを受け止めたのは、何という事だあのバーナビーである。
「……ありがとうございますバーナビーサン」
「なんですかその棒読みは」
呆れた顔をするこの男は、外面だけはいいのだが、中身は悪い意味で極端に子供っぽい。
というか人との接し方を分かっていない。最初の取材の時そういう点でワイルドタイガーと意気投合した。
とりあえずそんな個人的好き嫌いは置いておいて。ヒーロー嫌いなんて言ったらファンが怖い。
まぁ幸運にも取材対象(しかも大物)が向こうから出向いてくれたのだ。これを捕まえない手はない。
「んじゃバーナビーさん、さっさと取材させてください」
「あなた本当に僕に興味ないですよね」
「否定はしません」
適当に相槌を打っていると、バーナビーがため息をついて私の右手を掴んだ。書けない離せ。
「ねぇ、これ終わったら、二人で飲みなおしません?」
一体これはなんの冗談だ。
もしこれがあのタチの悪い童話ならば、早く日付変更の鐘が鳴って欲しい限りである。
Cinderella
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