信号

「別れよう」と、あの時の自分が言った言葉は今でも自分の中にひっかかっている。

その時あいつは、「そう」とひっそり泣き笑いの表情をして、そしてこの交差点で別れたのだ。

(そうだった)

あの時の、赤信号とあいつの右腕の包帯がいやにまぶしく見えた。

今でもはっきり覚えている。

「静雄?」

そう、あの時あいつは俺の名を呼んで、そして、

「って、お前!?」

久しぶり、と笑ったこいつは変わらず、相変わらず愛おしくて。

「元気そうだな」

「右腕完治したよ、おかげさまで」

そう言って腕を軽く振る。

「そうか、よかった」

「静雄も元気そうで何より」

あいつは、俺をしばらく見た後、んじゃ行くねと言って、あの日のような笑い顔で、青信号を渡っていこうとする。

あの日から変わらないのが俺だけじゃないとしたら。


俺は点滅し始めた信号を無視して、あいつの背中を追いかけた



信号

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夢主の怪我はシズちゃんのせいです。補足。



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