微笑
「せんせぇ、ネイガウスせんせ、い」
彼女のうわ言に私の名前が出るほど私は彼女に懐かれていたのかという驚きと、そしてとまどい。
雨の中、どしゃりと目の前で倒れたときは肝が冷えたが。
「……ただの風邪か」
額に手を当ててみると熱かったが、どうやら大事には至ってないようだ。
彼女は熱にうなされている。
どうすれば、少しでも緩和してやれるだろうかと考える。
彼女のうわ言がまだぽつぽつと聞こえる
「せんせい、ねいがうすせんせい、わらってくださ、い」
思考が一瞬停止した。
「だって、わた、し、せんせいのわたったかお、みたことない、から」
「…………」
何故彼女はここまで俺の事を思うのだろうか。
そんな事を考えると、何故かふと笑いがこぼれる。
とりあえず彼女の頭を撫でてやると彼女は微笑みを浮かべた、安らかな顔になった。
微笑
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