ひたすらあの日の夜を探している
あの日の夜、キレた俺が落ち着こうと適当に入ったバーで、あいつに会った。
「あ、平和島静雄さんだ」
またなんか公共物を壊したんでしょ?と初対面のそいつは小首をかしげた。
「なんで知ってるんだよ」
「ダラーズの掲示板。」
平和島さん有名人だからー、とそいつは笑う。
「でも平和島さんてさ、思ったより優しそうな人だね。」
そいつがそう隣で言う。
「そうでもねぇよ」
なんとなくこいつに好感を抱き始めたところで、こいつはあぁもうそろそろ帰らなきゃと席を立ち、じゃあね平和島さん公共物は極力壊さないように、と言い残し去っていった。
「……なぁマスター」
「なんです?」
「今の女、よく来るのか?」
「時々来ますね。」
その言葉を聞いて以来、俺はよくそのバーに通っているのだが、未だ再会は果たせていない。
俺はあの夜のあいつをずっと探している。
(会ってまた、話がしたい。)
あの夜のように
ひたすらあの日の夜を探している
[目次]