泣き顔なんて卑怯じゃないか

「ノボリ、ねぇノボリ、」

幼少の頃、クダリがべそべそ泣いていて、私はそれを見て堅実に対応するというのがいつものパターンでした。

あの時もそれと同じで、私はクダリが何で泣いているのか聞こうとして、

しかし私は、

「ノボ、リ?」

「なぜ、いつもクダリだけ、なのです、」

クダリのぽかんとした顔がにじんで見えたのは覚えております。

私とクダリはほぼ同時に生まれたのに私だけが兄としてしっかりせねばならないのはなぜかとずっと思っていたのございます。

だからクダリが泣くたびに私は反射的にその始末をしていて、

そうして溜め込まれた感情が、大した理由もなくそのときに爆発しただけなのでございます。

「ノボリ、ノボリ泣いちゃやだ、ノボリ、」

クダリが焦った調子で私の涙を袖で拭いてくれたのはいい思い出です。

あぁつまるところ私たち兄弟はお互いの泣き顔に卑怯なまでに弱いのです。今でも。


泣き顔なんて卑怯じゃないか



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