選択権
「メフィスト。あのなぁ、」
奴が双子をあやしながら問う。
「お前は本当に、俺に協力して、よかったのか?」
「何を言っているんですかあなたは。」
あの時はそうするほか無く、自分に選択権はなかった。
もし選択権があればこの双子は今、奴の腕の中にはいないだろう。
「まぁ別に私は後悔などしていません」
それに、と私は奴に向かって大げさに手を広げてみせる。
「その後私はこうやって好きであなたと一緒にいます。」
それに関しては私に選択権が充分にあり、この現状は、選んだ結果にすぎない。
悪魔が義務で動くとでも?と小首をかしげて見せると奴はほっとしたように笑った。
「それにしてもあなた、聖職者のくせに悪魔を気遣うなんて、本当に変わり者ですね」
そう話題を変えると彼は何言ってんだ、とニヤリと笑った。
「お前は人間より人間らしいぜ、メフィスト」
あぁ思えば私は、彼に会ってからというもの、ずっとほだされ続けて、
私に選択権なんてなかったのだ。
選択権
[目次]