甘ったるい
「お帰り、そしてお疲れ様!」
いつものように彼が私を出迎えた。
その事に何も疑問も抱かない私は、相当彼にほだされている。
(そもそも何故彼と同居しているんだったか)
そんな事を考えつつ夕食が用意された食卓につく。
「今日は君が早く帰ってくる気がしてね」
そう甘ったるい笑顔で奴は言う。
「そうですか」
私はそれを適当にあしらう。
「あぁそうだ、食後にコーヒーを淹れよう」
君の疲れがとれるように、と彼は笑う。
彼のコーヒーは砂糖と、特にミルクがたくさん入っている代物である。
言ってしまえば甘ったるい。
「えぇ、お願いします」
それでも彼の淹れたコーヒーが嫌いではない辺り、私も随分甘ったるい。
(私も、彼も、この生活も、)
つまり彼のコーヒーは彼と私の間にある全ての物の象徴である
甘ったるい
[目次]