オルゴール
音の出ないオルゴールなんて、何の意味があるんです?
と彼に言うと彼は笑ってだって綺麗だからと言った。
「観賞用、ですか」
「そうそう」
手の上でくるくるとそれを弄ぶ彼。
「それに、もう壊れてるならそれ以上壊れる心配もないしねぇ」
君もそうだけど、と彼が笑いかけてくる
「否定はしませんが」
それでも、と私は彼に問う。
「それ以上壊れてしまう可能性は考慮しないんですか」
「そうだねぇ、」
彼はにこりと微笑んで私を抱きしめた。
「まぁ精々気をつけるよ」
「そうしてください」
彼の落としたオルゴールが砕ける歪な音がした。
オルゴール
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