石鹸
当たり前なのだが彼と私の使っている石鹸は違う。
「お前女みたいな匂いすんな」
「紳士たるもの香りにも気を使わねば。」
「ふーん」
「だから髪かき混ぜないでくださいよ!」
「いいじゃんか」
気持ちいいんだよ、と彼が言うのは悪い気がしないのだが、髪をかき回される私にはたまったものではない。
「じゃあそうですねぇ……」
アインツヴァイドライと指を鳴らして姿を変える。
「この姿なら別に撫で回そうが洗おうがご自由に」
「いいのか?」
「えっ」
まさか真顔で返ってくるとは思わなかった。
「お好きにどうぞ?」
あぁでも、と付け足す。
「石鹸はあなたのじゃなくて私のを使ってくださいね」
「細かいことはいいだろ?」
「何を言ってるんですか!私は紳士なんですよ!」
「あぁはいはい」
「持ち上げないで下さいよ!」
「好きにしていいっつったのお前だろ?」
「前言撤回です」
石鹸
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