これ
「ね!あれ見てあれ!」
クダリさんは子供っぽい言動が多い。つまりこそあど言葉も多い。
「どれですか」
それを完璧に理解できるのはノボリさんくらいである。
「あれ!あそこ!」
彼がそう言って指を差す方向を見てみるがこれと言ってクダリさんの興味を引くようなものは無い。
何もありませんよ、と抗議しながらクダリさんの方に向き直ると、クダリさんがどーん!と言いながらぶつかってきた。
「あぶないでしょう!」
私が怒るとクダリさんはいつもの笑顔のままでごめんなさーいとおどけて謝る。
そしてすぐぱっ、と視線を他に移す。
「あれ食べたい!」
彼が指差す先にはお菓子のワゴンである。どうやらヒウンシティからの出張らしい。
色とりどりのお菓子が揃っている。
「どれですか?」
彼の事だから全部!とか言い出しそうだと思っていると、
これ!と彼の元気な声がやけに耳元で聞こえた。と思うと唇に何かの感触。
現状認識にかかった時間は15秒。
「お菓子何にも関係ないじゃないですか!」
「お菓子は口実。さっきのもウソ!でもキスしたかったのはホント!」
あまりにも明るく言われると毒気の一つや二つ簡単に抜かれるのである。
これ
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