どうしようもない

今日は何故だか双子の兄の様子が変である。

「あ、あら、」

兄がどしゃあ!と転ぶ所なんて一体いつぶりだろう。十五年以上見ていないのは確実。

「ノボリ、大丈夫?」

とりあえず書類を拾い集めるのを手伝う。えぇはい大丈夫ですありがとうございますと言いつつ兄は書類を重ねて揃える。

一日中兄はぼーっとしていた。だっていつもと違う。

「ねぇノボリ、どうしたの?」

「いえ、なんでもありません……」

確か昨日まで兄はいつもどおりだった。

昨日何か変わったことがあっただろうか。

(あ、)

「あの挑戦者のあの子?」

兄の顔がぼっと赤くなる。

え、まさか、ほんとに?

「笑うなら笑ってください……」

「いや、笑うとかそんなんじゃなくて」

兄が、なんでもできてしまう兄が、こんな風にどうしようもなくなっているところなんて滅多に見ないから。

自分もどうしようもなくなっているんじゃないだろうか。


どうしようもない



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